テレビや新聞でもよく見聞きする「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)。
しかしこのSDGsとはいったいどんなものなのでしょうか?
そこで、以前よりこのSDGsに取り組み情報を発信している、大橋運輸の広報、部坂さんを訪れ、
- そもそもSDGsとは?
- 私たちの生活との関係は?
- 参加するにはどうしたらいい?
ということを伺いました。
さらには、SDGsと関係のある『CSV経営』、そして2020年に10月に大橋運輸さんが選定された『地域未来牽引企業』についても伺いました。
私たちにも関係あるの?
『SDGs』17個の目標とは?
--「SDGsについて調べると『持続可能な開発目標』・『2030年に達成すべき17の目標』とありますが、ちょっとわかりにくいですよね…」
部坂さん(以下敬称略)「そうなんですよ。こちら国連のサミットで決められたものを直訳したので、わかりにくいかもしれません」
--「小学生でもわかるように言うとどうなりますか?」
部坂「2030年までに、地球全体を住みよくしましょうということですね」
--「そのために17個の目標があるということですか?」
部坂「はい。17の目標全てを覚える必要はなく、種類を大別するなら、
- 貧困をなくす、安全・安心・健全な世界に
- 自然や資源を守る世界に
- あらゆる差別のない世界に
のどれかにあてはまるのではないかと思っています。
ーー「ちょっとハードルが下がりました」
部坂「どの企業さんも、企業の特長に合わせた取り組みをしていると思います。
ずっとものづくりだけで成長してきた日本が、地球にも人にも優しい、住みやすい環境を作るためにこの指標でやっていこう! ということですね」
ーー「この中ですと、大橋運輸さんはジェンダー平等の取り組み(トップ画像の⑤番)をされている印象がありますね」
部坂「確かに弊社では入社エントリーの際に、性別を書く必要もなく通名での勤務が可能です。
ただ、現在力を入れているのは、⑪番の『住み続けられるまちづくりを』なんです」
ーー『大橋さん=引っ越しや、生前整理・遺品整理なので、そのあたりでの取り組みでしょうか」
部坂「はい。弊社のある瀬戸市は、老年人口率が名古屋市の25%に比べて29%と高く、安全・安心・健康的に住み続けられる街にするための課題が多いんです。
そこで生前整理や遺品整理、お片付けのメソッドを使って「安心して住み続けられる街を作る」という取り組みができるんですよ」
ーー「こちらのコラムにあるように、家や部屋の整理は安心・安全な暮らしに繋がりますからね」
部坂「今後も少子高齢化は進むかもしれませんが、いわゆるゴミ屋敷にするのではなく、自立して、健康的に安心して長生きしていただきたいんです。
お片づけサービスを通じて、こうした環境を提案し、広めていきたいと思いますね」
ーー「なるほど」
部坂「また、弊社ではまだ使えるものは輸出していますので、ゴミの削減にも繋がりますし、すっきりと暮らすことを心がければ、余分なものを買わずひとつのものを丁寧に使うことになり、それもエコに繋がると思っています」
ーー「企業の実績を社会課題に活かすということですね。
では具体的に、私たちはどのようにSDGsと関わることができるのでしょうか?」
部坂「まずはSDGsの存在と大まかな内容を知っていただくだけで充分です。
もし可能なら、各企業のSDGsへの取り組みを見ていただき、その活動に賛同いただくこと。
もちろん経済的な支援でなくても構いません」
ーー「御社のお片付けサービスを活用すれば、自然とSDGsに参加していることになる!」
部坂「そうおっしゃっていただけると嬉しいです!」
ーー「ユーザーとしてはエコやジェンダーが理解しやすいですが、『地球をよくする』という視点で見ていくだけでも違ってきそうですね」
部坂「私たちとしては、地域に特化して、お子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、住みよい街づくりをしていきたいんですね。
ただ、モノではなく行動なのでわかりづらいため、小さいことを持続してコツコツ続けていくしかない。
とはいえ、個人ではできない取り組みも、企業を巻き込むことで『持続化』できると私たちは信じて活動しています」
SDGsと関係の深い『CSV経営』とは?
引用元:https://www.photo-ac.com/profile/1430832
ーー「ところで、御社のサイトを拝見すると、『CSV経営』という耳慣れない言葉が出てくるのですが…」
部坂「横文字ってわかりづらいですよね…。
直訳すると「共通価値の創造」なんですが、簡単にいえば、会社全体で地域の課題に取り組んでいるということですね」
--「以前は『CSR経営』というのが主力でしたが、それとは異なる?」
部坂「CSR経営は、その会社の事業と直接関係ないことでも、”世の中のため”にという目的で動いている活動だと思います。対してCSV経営は、直接『実際にやっている事業内容を通じて、地域の課題を解決する』ものです」
ーー「イメージとしては、かゆいところに手が届く?」
部坂「まさにそのとおりです!」
ーー「具体的にはどんなことをされてるのでしょうか?」
部坂「弊社では『オオサンショウウオの会』の川清掃です」
ーー「以前、御社の園田さんもコラムで紹介されていましたね」
部坂「ええ。実は瀬戸の市街地から車で30分ほどのところに、天然記念物のオオサンショウウオが住んでいるんです。
その場所でしか見られないですし、瀬戸市の自慢で子どもたちにも伝えていきたく、市でもツアーを組んでPRしています。
ところが川を訪れてみると、不法投棄がとても多くて…」
ーー「不法投棄物は大きなものが多い。そこで大橋さんの出番!」
部坂「まさにそのとおりなんです。
弊社はもともと地元の陶器を運んだことが礎で、かつては馬で運び、地場産業として地域で成長させてもらったんです。
ですから、専門である『片づけ』『運ぶ』という業務を通じて、地域に貢献できると考えました」
ーー「市としても渡りに船ですよね。取り組みって縮小化されてしまう傾向にありますし…」
部坂「行政の課題は増えていく反面、取り組む人数は減少し、年齢層も上がっていきますからね」
ーー「だからこそ、地域密着の企業が積極的に動くことが大きな力になる」
部坂「はい。厳しい言い方なんですが、社会活動って持続しないと意味がないと思うんですよ」
ーー「気持ちとしては『有志がボランティアで』が理想だけれど、正直難しい。
『持続』を目的にすると、企業に入ってもらう方がいいですもんね」
部坂「『持続』にはモノの持続と人の持続の2種類がありますが、オオサンショウオの活動は、人の持続。
どんな素晴らしい取り組みも、続けなければ終わりますが、企業が絡むことで継承しやすくなるんです」
ーー「今回なら『川を美しく保ち、オオサンショウオが住み続けられる環境を作り続ける』ことが目標ですもんね」
部坂「ええ。中小企業や地域の企業には大企業ほどの資金はないですが、おっしゃるとおり『かゆいところに手が届く』というのが中小企業のいいところ。
会社の専門的なリソースを使って、地域の課題を解決できるところが大きな特長です」
ーー「会社というフィルターがあるからこそ続くということですね。
とはいえ『なんか難しいことやってるな』とか『ボランティアの方のように温かみがない』という意地悪な声も聞かれそうですが…」
部坂「実際にあります(苦笑)。
でも、私たちが目指すのは『持続』と、世の中や地域に広く知っていただくことなので、前だけを向き、取り組まさせてもらっています。」
ーー「頼もしいお言葉ですね。地元の誇りになると思います」
部坂「ありがとうございます。
余談ですが、オオサンショウウオの活動に惹かれて入社した社員もいるんですよ。
私自身も出身は他府県で、弊社のダイバーシティの取り組みを魅力に感じ、瀬戸に来たんです。
プライベートでは日本語を教えるコミュニティにも入っていて、自分で言うのもなんですが、私が入ったことで年齢層が下がったかなと感じています」
ーー「UターンやIターンを含め、住人の年齢層が高いエリアに若い方が住むことは、地域の大きな価値ですもんね」
部坂「周りには、キーワード検索で就職活動をしてきた者も多いので、こういう取り組みに関心のある人が全国から来るといいなと思ってます」
地域の課題を解決する『地域未来牽引企業』認定までの道のり
引用元:https://www.photo-ac.com/profile/742504
ーー「さて、冒頭にあったように『地域未来牽引企業』に認定されたそうですが、こちらはどんなもので、どのような企業が認定されるのでしょうか?」
部坂「こちらは、2017年に経済産業省が始めたもので、簡単に言えば「事業を通してお客様や地域に貢献している」という企業が認定されます。
緻密な活動報告や銀行さんの推薦状が必要になるので取得が難しく、私たちも4年目にしてようやく選ばれました」
ーー「瀬戸市の運輸会社としては初とか」
部坂「連絡をいただいた時は、社員をあげて喜びました!」
ーー「どんなところが評価されたのでしょうか?」
部坂「弊社の場合ですと、
- 遺品整理と生前整理、お片付けサービス
- 川清掃
- 安心・安全で住みよい街作り
の3つが『事業を通じて、社会の課題と解決した』と評価されたと思います。
」
ーー「地域密着の大橋さんでも4年かかったとは、よほど狭き門だったのでしょうね」
部坂「選に漏れるたびに『どこがいけなかったのだろう』ということを検証したことで、逆に成長できるきっかけができたと思っています。
前述のCSV経営のテーマにも『健康・安全・地域社会・環境・ダイバーシティ』の5つを挙げていますので、それらの活動についても評価されていたら嬉しいですね」
ーー「これがきっかけで、今後全国展開ということも考えていらっしゃるのでしょうか」
部坂「それは考えていません。
その理由は、地域貢献が創業からの主軸であることと、品質を保ちたいから。このテーマを変えるつもりはありませんね」
ーー「力強いお言葉ですね。
今年はコロナもあり、全体的にムードも重く、『二極化』というワードもよく出てきますよね」
部坂「大企業が大半のシェアを取り、真ん中がなくて、あとは地域の中小企業と個人事業主が占めるという図式になる可能性もありますよね・・」
ーー「そういう社会情勢も含め、会社の主軸としても、経営の上でも持続を目指して今後も地域に目指していかれる」
部坂「はい。目の行き届く範囲で、サービスの質を保ち、さらに高めていきたいです」
ーー「今回は、SDGs・CSV経営など、耳慣れない言葉がたくさん出てきましたが、ただ会社を動かすのではなく、『何のため』『誰のため』に存在意義があるのかを打ち出していくことが、今後ますます必要になりそうですね」
部坂「正直、価格を下げればお客様は増えると思います。
でも私たちはそこではなくて、社会全体や地球に対してどんなことを取り組んでいくかを見ていただきたいんです。
地元のことを一番に考える、いつでもフットワーク軽く動ける企業でいたいと思っています。
企業としても、座学でのエコ教室や、小学生向けの交通安全教室などにも取り組み、地域の課題をひとつひとつ解決していきたいと思います」
ーー「企業として、CSV経営に重点をおいたことがSDGsに繋がり、それが今回の選定にも繋がったということですね。
今後はSDGsのイベントにも参加されるそうですね」
部坂「12月に名古屋の東京海上さんのビルで、大がかりなイベントを行うので、そちらに参加します」
ーー「異業種が集まるので新しい事業が展開するでしょうし、リクルートのブランディングとしてもいいですね。
また取材させてください」
トップページ引用画像:https://www.0084.co.jp/activity/sdgs/
取材:「綴屋」ライター/増田有香(https://tsuzuriya.jp/)